家族の修学旅行。

塀の向こうへと一歩踏み出すと、突然目の前にその風景が開けた。
松を配した池の奥、まばゆいばかりの金の輝きに思わず「おおーっ」と
声がもれる。あの頃も、同じリアクションをしたような気がする。
中学校の修学旅行以来、久しぶりに見る金閣寺だ。
隣で、父も全く同じ反応をしていた。

両親の35年目の結婚記念日。何かプレゼントをしたいといったら、
「大人の修学旅行がしたい」と父。プレゼントでなくていいから
家族で行こうといい出して、みんなで京都旅行となったのだ。
金閣寺、清水寺、三十三間堂。
50年近く前に、父や母が旅した修学旅行のルートをたどる。
京都には何度か来ているけれど、定番すぎてなかなか立ち寄らない所ばかりだ。
改めて今見ると、あの頃は退屈だった庭の造形の美しさや仏像の表情の
やさしさなんかをしみじみと感じて、思っていた以上に感動させられる。

父は事細かに歴史などを調べてきていて、うるさいくらいに解説してくれる。
感心しながら聞いてあげると、すごくうれしそう。母は、お寺よりグルメ。
リストアップしてきた老舗の料亭やら和菓子屋さんを制覇して、大満足だ。
四条あたりをぶらぶら歩いていて、古くからのお土産屋さんを見つけると
2人とも修学旅行のときそこに立ち寄ったといって大盛り上がり。
あの頃と同じものがまだあるとか、気になっていた後輩にここでお土産を
買ったとか。それこそ中学生みたいに、はしゃいでいる。
その夜は、お酒を飲みながらそれぞれの修学旅行の思い出話大会。
父の切ない恋バナとか、母の意外なモテっぷりとか、初めて聞く話が続出。
両親にもそんな甘酸っぱい時代があったんだと気づかされて、新鮮だった。

家族旅行なんて何年ぶりだったかな。修学旅行というテーマのおかげで、
発見もあったし楽しみも広がった。なによりも、それぞれの思い出が
交差し合うことでたくさん話せて、お互いの気持ちが深まった気がする。
結婚記念日は、家族の始まりの日。それがやりたかったんだね、お父さん。

コラムの一覧へ
コラムの更新はdear mayukoの各SNSアカウントからもお知らせしています。

このページをシェアする