星空の劇場。

真っ青な空を背景に連なる緑の山並み、八ヶ岳に向かって車を走らせる。
森を抜けてコテージに到着すると、真夏だというのに風が涼やかだ。
買ってきた食材や荷物を運び込んだら、さっそくテラスで乾杯。
夜に備えて、食事も早めに済ませようということになった。
今夜は、八ヶ岳の麓で夏の間だけ開館する日本一標高の高い映画館に行く。
ずっと行きたかった高原の野外シネマだ。

会場は、木々に囲まれた森の中。まだぼんやりと明るさが残る夜7時、
階段状になった草の客席には既に多くの人が集まっていた。
何回か来たことがある友人は、「直接座ると途中で痛くなって大変だから」
と準備万端に全員分のクッションを用意してくれている。
あたりが徐々に闇に包まれてくるにつれて、ワクワクと期待が高まってくる。
それにしても、夜風はかなり冷たい。友人のアドバイスで、
大げさだと思いながらも長袖のパーカーに膝掛けまで持参してきて良かった。
8時、会場を照らす明かりがすべて消されると、場内は静まりかえり
かわりに木々が揺れる葉音や虫の声が聞こえてきた。
いよいよ上映開始だ。世界初の月面着陸を題材にした映画で、
実は既に一度観たものだったのだけれど、自然に囲まれた特別な環境で観ると
また違った感動を覚えた。特に宇宙のシーンは、スクリーンの向こうに広がる
漆黒の闇が臨場感を倍増させて、完全に宇宙空間を浮遊する感覚に。
すごい体感。これが、野外シネマの醍醐味なのかもしれない。
期間中は、日替わりでさまざまな映画が上映されるらしい。
宇宙が舞台の映画を選んだのは偶然といえば偶然だけれど、大正解だった。

上映が終わって感動に浸っていると、頭上の暗闇にもうひとつの感動が
待っていた。見上げた夜空に、満天の星が広がっていたのだ。
しかも、都会では見ることができない天の川まではっきりと。
このきらめく空のかなたに降り立ったんだ。再び映画の世界に引き戻された。
その場にいた人たちは、みな同じ想いだったに違いない。
しばらくは、誰も帰ろうとしなかった。

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