- Column
- Nov. 15 2019
色づく秋に、心奪われて。

社用で出かけた平日の午後。用事を済ませたあと、気持ちのいいお天気に
誘われて近くの公園を少しだけ散歩してから戻ることにした。
オフィス街から木の生い茂る公園に足を踏み入れると、都会の喧噪が
遠のく気がした。そして、目の前に広がるのは秋一色に染め上げられた世界。
いつの間にか、季節はすっかり進んでいたんだね。
公園の門から続く、鮮やかに色づいた銀杏並木。青空とのコントラストが
まぶしいくらい美しい。足元を見れば、一面に落ち葉が降り積もっている。
その黄金色の絨毯を踏みしめながら並木道を歩くと、
湿気を含んだような落ち葉の匂いが香り立つ。秋の匂いだ。
やがて、木々の向こうに明るい空が開けて池が現れる。水辺の周りを彩るのは
真っ赤なモミジ。そこに銀杏の黄、欅のオレンジ、さらに常緑樹のグリーンが
加わり、息をのむような華やかな風景を描き出していた。しかも、その美しい
風景は鏡のような水面にもくっきりと浮かび上がっているのだ。
これって、本当に都会のど真ん中なの?
何げなく歩いた公園で、こんなに見事な紅葉が見られるなんて。
山奥の湖だって、こんな贅沢な景色が見られるかどうか。
都会って、実はすごく自然豊かなんだね。遠い名所まで行かなくても、
池の畔のベンチでたっぷり秋を満喫できるんだもの。
うっとりと都会の紅葉に見とれていると、目の前をハラハラとモミジの葉が
舞い落ちていった。木は、陽ざしが弱まる冬に備えて葉を落とす。
大切な幹に栄養を集中させるために、葉に送る養分をストップさせるのだと
聞いたことがある。エネルギーが途絶えて散っていく葉が、最後に見せる
精一杯の輝きが紅葉なんだ。そう思うと、なんだか切ないね。
秋がもの哀しいのはそのせいかな。そんなことを考えながら
センチメンタルな気分に浸っていたら、いつの間にかあたりが薄暗くなってきている。
そういえば、まだ仕事中だったっけ。美しすぎる紅葉のせいで、
すっかり山奥の湖にいる気分になっていた。
ちょっとのんびりすぎたかも。いいかげんオフィスに戻らなくちゃ。