月と歩けば。

いつもより帰りが遅くなった夜、
駅からの道を少しショートカットするつもりで公園の中を歩いた。
住宅街の中にある公園は静まりかえっていたが、今日はなんだか明るい。
花壇に揺れるコスモスの花の色もかすかに感じるし、
自分の影も意外なほど濃い。街灯の電球でも変えたのだろうか。
そんなことを思いながらふと目を上げると、夜空にきれいな月が輝いていた。
月の光のせいだったんだ。

そういえば、間もなく中秋の名月。お月見の季節だ。
空気がカラリと澄んでくる秋の夜空は、月をいっそう美しく見せる。
思わず写真を撮りたくなるくらい、フォトジェニックな月。
眺めるもの、その姿を愛でるものというイメージが強すぎて、
明るさだってちゃんと届けていたんだということを、すっかり忘れていた。
月のおかげで、公園ばかりでなく普段なら不安になるくらい
ひっそりとした夜道も、だいぶ先までほのかに照らし出されている。
公園のブランコ、通りにポツンと立つポスト、庭先で香るキンモクセイの木。
見慣れたものたちが、昼とは違うしっとりとした表情を見せる。
いつもは足早に通り過ぎる道を、今日はゆっくり夜の景色を楽しみながら歩く。
太陽はまぶしいほどに照りつけて
あらゆるものをくっきりと浮かび上がらせるけど、月はほんのり照らして、
それぞれの佇まいをやわらかくするみたい。
それでいて、淡い闇がディテールを隠すからひとつひとつの存在感は高まる。
ほら、門の上にちょこんと置かれた猫のオブジェが、今にも動き出しそう。
いつもの帰り道は、思いがけず幻想的な夜の散歩になった。

振り返れば、一緒に散歩を楽しむように月が後ろをついてくる。
そうか、ひとりで歩いているつもりだったけど、ずっと月と一緒だったんだ。
そう思ったら、ますます楽しくなってきた。
もしかすると、道を照らしながら家まで送り届けてくれたのかな。
お月さんは、やさしいね。

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